分散型水道×防災×可視化 水道屋が考える「止まらない水」のつくり方 2025年12月22日
分散型水道とは?
防災と地域インフラを支える新しい水道の考え方
― 分散型水道 × 防災 × 可視化 ―
近年、「分散型水道」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
国が分散型水道の導入を後押しする方針を示したこともあり、自治体や企業、防災分野を中心に注目が集まっています。では、分散型水道とは何なのか。そして、なぜ今この考え方が必要とされているのでしょうか。

分散型水道とは何か
分散型水道とは、大規模な浄水場と長距離の配水管に依存する「集中型水道」だけに頼らず、生活圏単位で小規模な水源と浄化・供給の仕組みを分散して持つ水道の考え方です。
既存の本管を否定するものではなく、本管を基幹としながら、補完的に水の供給拠点を地域内に点在させることで、災害時やトラブル時のリスクを大きく下げることができます。
集中型水道は、平時においては非常に効率的な仕組みです。しかし、人口減少による維持管理費の増大、老朽化した管路の更新問題、そして地震や豪雨などの自然災害が頻発する現状では、「一か所が止まると広範囲が断水する」という弱点が顕在化しています。
分散型水道は、こうした課題に対する現実的な解決策の一つとして位置づけられています。
分散型水道と防災の関係
水道屋として現場に立っていると、災害時に「水が出るかどうか」が地域の明暗を分ける場面を何度も見てきました。断水が長期化すれば、生活はもちろん、医療、福祉、事業活動にも深刻な影響が及びます。
分散型水道の大きな特徴は、平時から使われ、非常時にもそのまま機能する点にあります。
防災専用設備として倉庫にしまわれているものではなく、日常の生活や事業活動の中で使われている水の仕組みが、災害時にも「止まらない」。この考え方が、防災と水インフラを無理なく両立させます。
また、水源を一つに限定せず、雨水、地下水、既存の上水を組み合わせることで、地域ごとの特性に応じた柔軟な設計が可能になります。これは防災対策であると同時に、長期的なコスト管理の観点からも有効です。


「可視化」が分散型水道の鍵
水道インフラは、本来とても重要な存在でありながら、普段は見えにくいものです。
分散型水道を導入する上で、私たちが特に重視しているのが可視化です。
・どこに水源があるのか
・どのように浄化されているのか
・災害時にはどう使われるのか
これらが「見て分かる」状態になることで、住民や利用者の理解が深まり、維持管理への意識も高まります。可視化は、単なる説明手段ではなく、分散型水道を地域に根付かせるための重要な要素です。
吉田工業が目指す分散型水道の立ち位置
私たち吉田工業は、これまで水道工事を通じて地域のインフラを支えてきました。しかし、これからの時代に求められる役割は、単なる「施工会社」にとどまらないと考えています。
分散型水道 × 防災 × 可視化
この3つを軸に、施工するだけでなく、地域水インフラの設計者であり、実装の旗振り役となること。それが私たちの戦略です。
設計し、施工し、運用まで見据える。
そして、防災士としての視点と、水道屋としての現場感覚を掛け合わせることで、机上の空論ではない、実際に使える分散型水道モデルを形にしていきます。


エコウィンウォーターの位置づけ
分散型水道の実装を考える中で、当社では雨水を生活用水や飲料水レベルまで浄化できるエコウィンウォーターを、一つの選択肢として活用・検証しています。ただし、これはあくまで数ある手段の一つです。
重要なのは、特定の製品を導入することではなく、地域にとって最適な水の確保方法を設計すること。地域の条件や目的に応じて、最善の組み合わせを考えることが、分散型水道の本質だと考えています。
これからの水インフラに向けて
分散型水道は、これからの日本にとって避けて通れないテーマです。
国の方針が示された今、求められているのは、現場から具体的なモデルを積み上げていくことだと感じています。
吉田工業は、水を「工事する会社」から、水を「止めない仕組みを設計する会社」へ。
地域に根ざし、見える形で水インフラを支える。その挑戦を、これからも続けていきます。


